医療安全情報。中耳炎に対する抗生物質使用の必要性の最新の考えを知って自信をもった服薬指導を行う。

薬剤/医療安全/介護診療報酬

こんにちは ねこの静六です。

今日は先日中耳炎に関して添付文書が改訂する事になった事について書きたいと思います。

令和2年9月8日に厚生労働省より中耳炎の効能・効果を有する抗微生物薬(小児を禁忌とする薬剤を除く。)の「使用上の注意」の改訂の通知がありました。

具体的には医薬品の種類によって表記は多少異なりますが趣旨としては

中耳炎への使用にあたっては、「抗微生物薬適正使用の手引き」を参照し、抗菌薬投与の必要性を判断した上で、本剤の投与が適切と判断される場合に投与すること。

という内容が追加されます。

この改訂は抗微生物薬適正使用の手引き 第二版の内容に則したもので、手引きには以下のように記載されています。

抗菌薬治療
抗菌薬による中耳炎の治療目的と治療適応の考え方
抗菌薬治療の目的は急性中耳炎に伴う症状(発熱、耳痛など)の早期改善と急性中耳炎に続発する合併症を減らすことである。2015 年に発表されたコクランレビューでは、抗菌薬治療は、ティンパノメトリーの異常(鼓膜の可動不良)、鼓膜穿孔、反対側の急性中耳炎の発症を防ぐことに対して、一定の効果があるとされる 。一方で急性中耳炎は、抗菌薬処方がなくても、4分の3以上が1週間で自然治癒し、2歳以上は3日で70%改善し、2歳未満の場合は 10 日で約半数が治癒する事も知られ、全例に抗菌薬が必要な疾患ではない 。また抗菌薬治療は、下痢などの副作用や細菌の薬剤耐性化の原因となりうるため、必要の可否と必要な場合の適切な抗菌薬選択が重要である
米国小児科学会ガイドラインでは、抗菌薬投与を①耳漏がある場合,②重症(toxic、48 時間以上持続する耳痛,39℃以上の発熱)の場合,③ 6カ月~2歳で両側の場合に抗菌薬投与を行うと推奨している 。本邦のガイドラインでも、年齢とリスク因子を考慮し、臨床症状と鼓膜所見の評価の上で、自然寛解を期待して2~3日間の抗菌薬を投与しない期間を設けることが妥当とされている 。

抗菌薬投与基準
上記をふまえて中耳炎に対する抗菌薬投与基準を以下のように定める。

  • 中耳由来の耳漏がある場合には抗菌薬投与を考慮する。吸引等で鼓膜を可視化し穿孔部位から拍動性の耳漏が確認出来れば最も診断精度が高い。
  • 発熱、不機嫌、耳痛などがあり、発赤と膨隆を伴う鼓膜所見がある場合は、抗菌薬投与を考慮する。
  • 全身状態が良く、中耳由来の耳漏がない場合は、自然に改善することが多いこと抗菌薬の使用は副作用や耐性菌を作るデメリットがあること、フォローで改善しない場合には抗菌薬治療を考慮することの説明を行い、同意を得たうえで(下記の医師から患者への説明例参照、2~3日間の抗菌薬を投与せずに、解熱鎮痛剤などを中心とした対症療法を行う。
  • 抗菌薬投与の適応は、中耳炎が重症化する以下のリスクファクターを考慮する。(2歳未満の低年齢、免疫不全などの基礎疾患の存在、肺炎球菌ワクチン未接種、中耳炎の既往歴、医療アクセス不良。)

点耳薬(抗菌薬)
点耳薬(抗菌薬)が中耳腔内に入れば、理論的には高濃度の抗菌薬が中耳に届くことが期待される。鼓膜穿孔がない場合は無効であり、推奨されない。また鼓膜切開後の点耳薬は十分に検討された報告はない。鼓膜換気チューブ留置患者においては、いくつかの RCT にて治癒までの期間が短縮されるなどの有効性が証明されており、症例を選択して投与することが検討される 。

患者および保護者への説明
【医師から患者への説明例:急性中耳炎の場合】

中耳は耳管という管で鼻の一番奥とつながっています。こどもの耳管は大人に比べて、太くて短く、角度も水平に近いため、感冒などのウイルス感染症、アレルギーなどが原因で、耳管を経由して炎症が中耳に広がりやすくなっています。中耳の炎症の結果、耳を痛がって機嫌が悪くなったり、熱が出たり、鼓膜が腫れたり、赤くなったりします。この時期には、抗菌薬は特に必要なく、熱や痛みに対して解熱鎮痛剤で治療するだけで治ることが多いです。抗菌薬は良い薬ですが、必要のないときに使用すると悪いことがあり、下痢などの副作用、耐性菌を作ってしまい将来、非常に治療が難しくなることがあります。小さいお子さんは風邪をひきやすく、鼻を自分でかんだりもできないうえ、中耳炎の原因になる細菌に対して抵抗力が弱いので、中耳(鼓膜の奥)のなかでの細菌の量が増え過ぎてしまうことがあります。機嫌が悪く、鼓膜がひどく腫れている状態が続いたりするようになると、抗菌薬の助けが必要となります。まれに鼓膜切開をして膿を出すこともあります。待つ時期と抗菌薬が必要な時期を見極めるためにも、外来で経過をみる必要があります。

赤のアンダーラインをした部分が私が薬剤師にとって特に重要だと思う所です。

患者への医師からの説明例も記載されています。中耳炎=抗生物質では無い理由を理解して私たち薬剤師は服薬指導の際に患者さんに自信をもって説明出来るようにしたいですね。

今日もありがとうございました。

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